2018.04.02 Monday
フルグレインブライドルレザーは、イギリスの歴史あるタンナー、ベイカー社が製造する皮革です。
堅牢で耐久性が高く、特殊な製法により皮革の表面(ギン面=GRAIN)をそのまま残したフルグレインならではの質感や表情は非常に個性的且つ魅力的で、使い込む程に味わいと愛着の深まる素材と言えます。
WILDSWANSではこのフルグレインブライドルレザーを2016年4月から革小物シリーズの素材に採用し、現在までに7種を定番モデルとして展開しています。
WILDSWANSのラインナップの中では比較的新しく、また他で余り見かける事の無い種類のブライドルレザーでもありますので、いくつかのアイテムと共に素材の特徴や経年変化の様子などについて少しご紹介をさせて頂きます。
●ブライドルレザーは本来馬具の素材として開発された皮革で、蝋や脂を含むワックスを皮革内部に浸透させることによって耐久性や耐水性、堅牢性を持たせた素材です。
ベイカー社のフルグレインブライドルレザーも同様に皮革内部にはワックス成分を染み込ませておりますが、一般的なブライドルレザーと異なり、ワックスを浸透させやすくするための工程であるギン磨り(表面を削る作業)を行わずに仕上げられています。
ギン磨りをせずに仕上げられているために強度は高く、また皮革の表面をそのまま生かした仕上げによって荒々しくも表情豊かな風合いが特徴です。
ブライドルレザーの表面に粉状に浮かび上がったワックスは「ブルーム」と呼ばれ、ブライドルレザーと言えばこのブルームを思い浮かべる方も多いかと思います。
フルグレインブライドルレザーも一般的なブライドルレザーと同様にブルームを帯びたものもありますが、必ずしも全てのフルグレインブライドルレザーが表面をブルームに覆われているというものではなく、革一枚、または部位によっても個体差があり、ブルームがたっぷりと乗っているものもあれば、元からブルームを帯びていないものもあります。
表面のブルームの有無や量に関わらず、皮革自体には充分なワックスが含まれております。
多機能コインケース・フルグレインブライドルTONGUE 25,920円(税込)
画像のアイテムはフルグレインブライドルレザーを使用したコインケース・TONGUEです。
WILDSWANSでは非常にポピュラーなモデルで、こちらのフルグレインブライドルレザーに限らず様々な素材で製作されています。
このTONGUEについて、スタッフが実際に使用しているエイジングサンプルをご覧下さい。
左側が未使用、右側が1年使用したものになります。
使用によって表面のワックス分が落ちて、皮革本来の表情が出てきています。
ブルームはそのままお使い頂いていれば摩擦や熱により徐々に薄れて参りますが、溝や皺に詰まったワックスが長い年月を経て硬化してしまうこともありますので、極端にワックスが多い場合にはブラッシングなどで除去することも出来ます。
●フルグレインブライドルレザーは一般的な皮革に比べると硬い革ではありますが、サドルプルアップのように硬質な素材と比べ僅かにしなやかさや弾力を残したような印象です。
「強靭」とはしなやかで強く、柔軟で粘り強いことを指しますが、フルグレインブライドルレザーは文字通り強靭で長年使用してもそのコシが抜けにくく、また適度な柔軟さにより比較的傷も付きにくいという性質を持っています。
小銭入れ付き2つ折り財布・フルグレインブライドルGROUNDER 50,760円(税込)
オールインワンタイプのオーソドックスな2つ折り財布ですが、肉厚で革の塊のような迫力のある印象を受けるモデルです。
シンプルながらもあおりポケットや遊動式の札室の仕切りなど、独自の構造によって高い機能性を備えています。
右側はスタッフが1年半程使用していたフルグレインブライドルGROUNDER(ダークステイン)です。
皮革のムラ感や傷等の上に光沢が乗り、アンティーク感漂う迫力のある佇まいです。
また、画像では伝わりにくい点ではありますが、当初よりも幾分しなやかになったものの皮革のコシやハリは十分に残っており、いまだに手に取るとギシギシと革の擦れる音がします。
この質感こそがフルグレインブライドルの強靭さを表しています。
●現在フルグレインブライドルレザーシリーズのカラーバリエーションは ・ロンドンカラー ・ダークステイン ・ブラック の3色展開となっています。
皮革の染色については様々な方法があり、染料や顔料、或はその両方を組み合わせて染められます。
フルグレインブライドルレザーは染料による染色が施され、またその染まり方は革のギン面(表面)を含む表層のみが染まっており、この状態は「丘染め」などと呼ばれることもあります。
表面のみが染まった丘染めに対し、内部(芯)まで染料が浸透している状態の染まり方を「芯通し」と呼びます。 ブライドルレザーは皮革内部にワックス分を浸透させていることが影響してか、芯通しの皮革は余り見かけません。
フルグレインブライドルレザーも同様に皮革の表層のみが染色されている状態で、断面を横から見ると染料の浸透部分が層になった染まり方であることが分かります。
何れも表層であるギン面部分はしっかり染まっておりますが、染まった層の厚み(浸透の深さ)には個体差があります。
GROUNDERのコインケース内部など、裏貼りをせずに皮革の床面をそのまま使用している部分では、画像のように深く浸透し床面まで染みた染料が見えることもあります。
皮革の状態によるものですが、染料によって収納した物が汚れてしまうようなことはありませんので、どうぞご安心下さい。
皮革の色味の変化は元々の革の地色や、使用中に付着・浸透した物質なども影響を致しますが、染色された皮革はやはり染料自体の経年による変化が最も大きく影響を致します。
一般的にタンニン鞣しの皮革はクロム鞣しと比べて色味の変化が起きやすい傾向にあります。
フルグレインブライドルレザーも他のタンニン鞣しの皮革と同様に、使用して行く中で色味の変化が起こります。
大型長財布・フルグレインブライドルWAVE 81,000円(税込)
WILDSWANSの代表的な大型長財布で、がっしりと迫力のある外観と、大小様々な収納部が整然と配置された機能的な内装が特徴のアイテムです。
画像左側は未使用、そして右側はスタッフが使い始めて4ヶ月近く経過したフルグレインブライドルWAVE(ロンドンカラー)です。
ロンドンカラーは元々皮革の状態でも1枚1枚で明暗の差が多い色味ですが、経年により色味は深まって参ります。
ブラック等の暗い色よりも、明るい色味は変化の幅が大きく、また見た目にも変化が見て取れやすい傾向があります。
4ヶ月程では余り差は出ておりませんが、
こちらは更に使用期間が長く、1年半使用している小銭入れ・TONGUEです。
より色味が深まっていることがお分かり頂けるでしょうか。
色味の変化の度合いは様々で、色味が薄くなっていくこともあれば今回のように深まって行くこともありますが、いずれにせよ個性的な変化をじっくりとお楽しみ頂けます。
●ブライドルレザーの元々の使用目的であった馬具という種類の道具は、「安全」に直結する強度や耐久性、また操作性というものが最優先に求められます。
色味などはあくまで二次的な要素であるためか、フルグレインブライドルレザーの染料自体に耐水性は備わっておりません。
その為、皮革そのものは多少の水分を含んだところで著しく耐久性が損なわれるというようなことは無いのですが、水気によって色ムラや染みは発生致します。
試しに皮革に水滴を落としてみます。
直後はこのような状態ですので、実際の使用中に水滴が付着してしまった場合はすぐに払ったり、拭き取ったりすることで除去が可能ですが、
一時間後には水滴は革に吸収され、代わりにリング状の跡が残りました。 水に染料が溶け出し、水分の中を移動することでこのような染みやムラが出て参ります。
ブラックは元々の色の濃さからか大きな変化はありませんでしたが、明るい色味であればあるほど水染みはくっきりと見られます。
傷や色ムラなども経年変化の1つとしてお楽しみ頂くことをお勧め致しますが、染みなどを残したくないという方はこういった跡を完全に除去することが非常に困難なため、ご使用の際には雨や汗にはご注意下さいませ。
如何でしたでしょうか。
イギリス・ベイカー社のフルグレインブライドルレザーを使用したアイテムについてご紹介をさせて頂きました。 他にも様々なアイテムをご用意しておりますので、興味をお持ち頂けましたら是非ご覧下さいませ。

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- フルグレインブライドルレザーシリーズについて 6 (04/02)