SADDLE PULL UP(サドルプルアップ)について 8

WILDSWANSの定番素材、サドルプルアップのご紹介です。

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サドルプルアップはベルギー・ワロン地域エノー州のタンナー、マシュア社(Tannery Masure)が製造する皮革です。

ヨーロッパには伝統のあるタンナーが各国に存在しており、隣国のドイツやフランスといった国がクロム鞣しを得意とする一方で、マシュア社は1873年の創業から現在に至るまでの140年間、一貫してタンニン鞣しの皮革の製造を行っています。

マメ科の樹木であるミモザやウルシ科のケブラッチョ、ブナ科のクリなどの樹皮から抽出したタンニンを用いた伝統的な方法で製造された皮革は、その高い堅牢性や耐久性といった品質の高さからグローバルなシェアを誇り、生産量の約98%がヨーロッパを始め東アジアや北米などに輸出されています。

 

 

 

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WILDSWANSでは数あるマシュア社のラインナップの中で、「サドルプルアップ」という皮革を定番素材として使用しています。 サドルプルアップは堅牢性・耐久性に優れており、また一般的なタンニン鞣しの皮革に比べてオイル分を多く含んでいることが特徴です。

 

 

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サドル(Saddle)とは乗馬の際に使用する鞍という馬具を意味し、本来は馬具用の素材として用いられてきたことに由来しています。

また、プルアップ(Pull-up)とは皮革を折り曲げた際、皮革内部の染料がオイル分と共に移動し、皮革表面の濃淡が変化する現象を指します。

 

 

 

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プルアップは特に明るい色味(サドルプルアップの場合、バーガンディやキャメルなど)の皮革では特に変化が見て取れやすいもので、しっかりと油分が含まれている皮革に見られる現象です。

サドルプルアップは牛革の中でも比較的厚みを持った部位である成牛のショルダー(首の後ろから肩回りにかけての部分)を使用しています。

一口に牛革と言っても実は部位によって様々な特性を持ち、前脚や頭の動きに合わせて頻繁に可動するショルダー部の真皮はしっかりとした繊維が密度高く絡み合っているために高い強度と適度な柔軟性を兼ね備えており、これは鞣されて皮革になった際にも特徴として残ります。

またショルダー部分は可動の多い部位であることから「トラ」と呼ばれる首の皺などが入りやすい箇所になります。

 

 

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これが皮革に入ったトラです。

トラの入り方は皮革一枚一枚で異なり、大小や強弱は様々ですがほぼ全ての皮革にトラは見られます。

 

 

また、生々しいお話にはなってしまいますが、皮革の表面にはトラだけでなく血筋と呼ばれる血管や生体の時に付いた大小無数の傷痕、虫刺され痕等も多々見られることがあり、生きていた頃の痕跡は皮革になっても消えずに残ります。

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一般的に流通している皮革では工業製品のように見た目の均一化が求められ、この生きていた証を消すために様々な加工を施しますが、サドルプルアップは無理にトラや血筋、大小の傷痕を隠そうとはせず、主に染料を用いて自然の風合いを残した仕上げを施すことで独特のムラと透明感を持った風合いを生み出しています。

 

その為同じ製品であっても、よく見ますと1点1点表情が少しずつ異なります。

個体差のある趣きのある表情や美しい光沢は使い込むことで更に増していき、日常生活での傷も加わっていきながら、やがては迫力を伴った自分だけの風合いへと変化していきます。

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潤沢に含んだオイルによりクリームの塗布も特に必要なく、馬具に使用されるような耐久性と強度を誇り、長い年月を経ながら表情豊かなエイジングを見せるという、タンニン鞣し革の理想形とも言える革がこのサドルプルアップです。

 

とは言えそんなマシュア社であっても、やはり昨今取り沙汰されている世界的な原皮の流通の不安定さには少なからず影響を受けているようで、厚みのあるタンニン鞣しのスムース革は、以前にも増して希少な高級皮革となっているようです。

クロム鞣し革と比べ、はるかに時間と手間が掛かるタンニン鞣しの作業工程に加え、肉厚原皮の不足が重なり、重厚で良質なスムース革の流通量は実際世界的に少なくなっておりますし、皮革の見本市や展示会で見かける機会も随分と減りました。

創業当初からサドルプルアップを定番素材として使用し続けているWILDSWANSでは、現在に至るまで一貫してブランドの定める基準によって皮革を厳選し、基準を満たした皮革のみを製品の素材として使用をしておりますが、良質な皮革の流通量の減少により時期に依っては生産量に影響が出るようなことも起こります。

 

こういった状況により造り手側としては生産量のコントロールが難しい素材ではありますが、マシュア社のサドルプルアップは世界中を見渡しても依然として高水準のタンニン鞣しのスムース革であり、WILDSWANSを代表する素材の1つでもありますので、今後とも革小物から鞄に至るまで、様々なアイテムをこの皮革で製作していく予定です。

 

 

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堅牢ではあると同時に個体差もあり傷も付きやすいのですが、使っていきますと持ち主の方に寄り添うように生き続け、1つとして同じ表情に育たないところに魅力がある、本当に魅力的な皮革です。

 

もちろん、サドルプルアップに限らずWILDSWANSでは様々な特徴や魅力を持った皮革を定番素材として使用しており、またそれと同時に常に世界中の良質な皮革を探し続けています。

これは!と思う皮革に巡り合えた際には、ブログなど様々な形でご紹介をさせて頂きますので、是非そちらも愉しみにお待ち頂けましたら幸いです。

 

 



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