秋の深まりとともに/音楽を愉しむ・2016年10月

ようやく気温もぐっと下がり、秋らしい陽気となりました。

二十四節気でこの時期は「霜降」にあたり、暦の上ではもう秋の終盤に突入しました。

つい先日まで気温の高い日がつづいておりましたので、なんだか実感が湧きませんが、この「霜降」から次の「立冬」までの2週間の間に吹く北風を木枯らしと呼ぶそうですので、もう冬が目の前まで迫ってきています。

ぐずぐずしているとあっという間に冬になってしまいますので、これから本格的に始まる紅葉シーズン、秋の終盤を満喫しましょう。

さてそんな秋の深まりには、奥行きのある味わい深い作品をじっくり聴いてみるのはいかがでしょうか。

今回はすべて音楽プロデューサーとして高く評価され、時には奇才と呼ばれる程の職人技で音楽業界に大きな影響を与えた3人の、秋にぴったりな3枚を紹介致します。

 

 

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Hurricane Smith / Don’t Let it Die (1972年)

こちらのハリケーン・スミスという人は1955年にビートルズで有名なロンドンのアビーロードスタジオに就職しました。

ビートルズのデビュー当初からスタジオでのエンジニアとして活躍し、66年発売の「Revolver」を最後に、67年からはピンク・フロイドのデビューアルバム「Piper At The Gates Of Dawn」のプロデューサーに抜擢され一躍脚光を浴びました。

そしてそのレコーディングの空き時間を使ってジョンレノンに歌ってもらおうと思って書いた曲をひょんなことから自分で歌う事となり、リリースしたのがこちらのアルバムでした。

ジョンレノンに書いたアルバムタイトル曲「Don’t Let It Die」はスマッシュヒットし(声の感じも含めてほんとにジョンレノンのソロっぽい)、続くシングル「Oh Baby, What Would You Say?」も大ヒット、翌年アメリカビルボードチャートで第3位にまで上りつめました。

その後は続かず一発屋のようなかたちで姿を消してしまうことになります。

僕がこのアルバムを知ったのはもう14年前に遡りますが、当時レコードショプで働いていた時に、同僚の先輩が本作の世界初CD化を大いに喜び、興奮していたのがきっかけでした。

聴いてみると英国の田舎育ちの青年がアメリカのハリウッドの華やかさに憧れを抱いたようなきらめくサウンドでした。

そこにしゃがれ声の暖かみのある味わい深い歌声が合わさり、古き良き時代のアメリカを彷彿させるノスタルジックな感覚とでもいいましょうか、それがたまらなく懐かしい気持ちにさせてくれて、一瞬にして大好きなアルバムとなりました。

アルバム通して極上なポップソングで構成されていますが、ビートルズのエンジニア時代にプロデューサーのジョージ・マーティンから学んだ様々なギミックが、それぞれの曲により奥ゆかしい魅力を与えているのだと思います。

秋にじっくり聴き込みたくなるアルバムです。

 

 

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Original Soundtrack (John Simon) / You Are What You Eat(1967年)

つづいてのこちらもジャニス・ジョプリン、ザ・バンド、初期のサイモン&ガーファンクル等、名立たるミュージシャンを手掛けてきた名プロディーサー、ジョン・サイモンが製作した幻といわれる映画のサウンドトラックです。

映画の舞台は「Summer of Love」、フラワームーヴメントまっただ中の当時のアメリカの若者の生態を追ったドキュメンタリーで1968年の夏に公開されました。

現在は観る事ができないのでなんとも言えませんが、サイケな雰囲気溢れる作品だったようです。

一方このサントラですが、内容を知ったのは実は最近で、今年の夏YouTubeでたまたまこのアルバムに収録されているジョン・サイモンの「My Name Is Jack」という曲にたどり着いたのがきっかけでした。

60年代にイギリスで活躍したバンド、マンフレッド・マンの曲で、日本でもムーンライダースやピチカートファイブがカバーしています。オールドタイミーな良いポップソングだなと思ってこのサントラを購入してみたのですが、これがとんでもない世界への入り口だとは思いもしませんでした。

アルバムはラジオのディスクジョッキーのナレーションをコラージュした曲から始まりますが、民族音楽や叫び声や風変わりな楽器の音やらが次から次へと飛び出してくるハチャメチャな内容で、極めつけはタイニー・ティムが歌うロネッツの「Be My Baby」です。

タイニー・ティムという人は独特な甲高い奇妙な歌声で見た目も風変わりな人だと知っていたので、あのロネッツの名曲がどうなっちゃっているのだろうかと思いましたが、想像以上の変わり様でした。

(ちなみに当時ボブ・ディラン邸に招かれたタイニー・ティムはディランの前でこの奇妙な歌声で歌いまくった挙げ句、「バナナが欲しいのかい?」と一言言い放たれたそうです。)

しかし演奏はザ・バンドを名乗る前のメンバー達が務めており、さすがの仕上がりです。

ザ・バンドのメンバー以外ではピーター・ポール&マリーのピーター・ヤーローが多くヴォーカルをとっていたり、名立たるセッションミュージシャンが参加しているので、アルバムを通して不思議と気持ちよく聴けてしまいます。

奇才ジョン・サイモン恐るべしです。

まだまだ謎が多いのですが、個人的にもこの秋にじっくりと聴き込んで解明していきたいと思っています。

 

 

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Van Dyke Parks / Songs Cycled (2013年)

最後になりますが、こちらのヴァン・ダイク・パークスは僕にとって最も思い入れが深いミュージシャン・プロデューサーです。

はじめての出会いは高校生の時なのでもう20年以上前になります。

今ではわからない事があれば何でもネット検索で調べられる世の中ですが、当時はWINDOWS 95が発売したかしないかの時代でしたので、知りたいことは図書館や本屋に行って調べるか、その筋に詳しい人と知り合いになり教えてもらうしかない時代でした。

しかし学校に行っても学年で音楽の話ができる友達はほとんどいないですし、数少ない音楽仲間でさえもメジャーなものからちょっと離れると知らないのが当然でしたので、このヴァン・ダイク・パークスについては自力で調べていくしかない存在でした。

しかしなぜそこまで関心をもつことになったのか、そもそもの出会いは日本のバンド「はっぴいえんど」のアルバムが、当時初めてLPで再発されたからでした。

はっぴいえんどにのめりこむうちに、ラストアルバムにクレジットされているこの聞き慣れない名前が、妙にゴロが良く憶えやすい発音だったので気になり出したのです。

それ以降、音楽系の雑誌をなにげなく読んでいると、この名前があちこちで出てくるのに気がつきました。

アメリカ人でワーナーブラザーズレコードの社員として数多くの名盤を製作してきたこと、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンに信頼され幻のアルバム「スマイル」に携わった人、ソロとして何枚もアルバムを出しており高い音楽性から奇才と評価されながら売れなかったこと、トリニダード・トバゴの伝統音楽カリプソやスティール・ドラムを世界に広めた人等々。

初めて購入した1stアルバム「Song cycle」はニューオーリンズジャズ、ラグタイムをはじめとする古き良きアメリカの音楽を独自のアレンジで構築したもので、当時の自分には難解すぎて何度繰り返し聴いても良くわからなかったのですが、それでもこれは凄いものだという確信だけはあり、2ndアルバム「Discover America」を購入してみました。

これが大当たりでその後の僕の音楽生活の楽しさを広げる大きなきっかけとなりました。

今まで聴いた事のなかったカリプソという音楽を母国アメリカの音楽と結びつけてポップソングに昇華した聴きやすいアルバムで、音楽って本当に良いものだなと心から思いました。

スティール・ドラムの気持ち良さもこれで初めて知りました。以前このブログでも取り上げた「Esso Trinidad Steel Band」もヴァン・ダイク・パークスのプロデュース作品です。

その後のアルバムもどれも素晴らしいものでしたが、本作「Songs cycled」は1stアルバムのオマージュともいえるタイトルで、キャリアの集大成ともいえる内容がとても気に入っています。

先日近所の川沿いをランイングした後、橋の上でふと空を見上げると秋の夕暮がとても綺麗でした。

その時にiPhoneで聴いていたこのアルバムがとても合っていて、しばらくその場で立ち尽くしてしまいました。

 

以上、秋の深まりとともにじっくりと味わって聴きたい3枚を紹介致しました。

 

次回はいよいよクリスマスが近づく頃です。

普段なかなか聴く機会の無いようなクリスマスアルバムを紹介できればと思います。



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