木々の声を聴く 2016年1月

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冬の北海道、暖冬とは言え真っ白な世界に
木々は力強く生きています。
エルニーニョ・南方振動の影響で、気温も降雪量もとても穏やかな日が多いこの冬の北海道。
それでも北国。辺りは白くなりました。
交通量が元々少ない上に、積もった雪に吸音効果があるので、穏やかな日はびっくりするほど静かです。
風のまったくない日には舞い落ちてくる雪の降り積もる音が聞こえます。
広い雪原から聞こえてくるかすかな音は奥行きを感じるとても優しい音。


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雪に覆われた景色の中、森林の樹木は根から吸い上げる水分量を大幅に減らして成長活動を一休み。
風雪に耐えながら春を待っています。

幹の水分量の少ない秋から冬の期間は家具や建築で使用される木材の伐採期間です。
水分量の少ない時期に倒す事で、乾燥状態にするまでの収縮する割合を減らし、割れや狂いの少ない材にすることが出来ます。
水分と共に抜けてしまう樹脂分量も抑える事ができるので、素材が本来持っている艶も保つことが出来る。
また、内部の水分が少ないという事は土壌からの栄養素も少ないとういう事になるので、後々の虫害やカビ、腐朽菌の繁殖を抑える効果もあります。

人間は、冬季に幹の水分量を減らす樹木の仕組みを利用している訳ですが、樹木にはそうしなければならない理由があります。
気温が氷点下を大きく下回ってきているのに夏場のように細胞内に水分をタップリと含んでいると、凍結した際に膨張し破裂してしまいます。
また、水分量を下げる事で細胞内の糖分やミネラル分の濃度が上がるので、凍結しにくくなる。
それでも水分無しでは生きていけないので幾らかは吸い上げます。
量を減らしていても北国の寒さが勝り、凍りついてしまう事も。
きつく凍てついた早朝に山の中を歩くと「パーン」と膨張に耐えられなくなった幹の裂ける音が聞こえる事もあります。
縦長に芯へ向かって深く裂けた箇所は何年かにわたって修復しなければなりません。
修復にエネルギーを使うので通常の成長活動が遅れてしまって周りの樹木よりも背が低くなってしまい、太陽の光が受けにくい状態となって、結果、生存競争に負けてしまう事もあると思います。

自然の中で生きるのは本当に大変です。

木が水を吸い上げるシステムには何パターンかあって、これによって家具にした時の仕上がりの質感に差が出ます。
針葉樹は1パターンでシンプルな仕組み。
幹はストローを束ねて立てたように構成されています。
無数のストロー自体が構造材で、パイプ内を水が通り、根から梢や枝へと運ばれていきます。
季節によってパイプの口径が変化し、水量の必要な春から夏にかけては太く、秋冬期は細くします。
春夏期の部分は組織量が少ないので柔らかく、秋冬期の部分は硬く丈夫。 この口径の違いによる密度差が濃淡となって現れ、年輪となります。
実際のパイプの口径は電子顕微鏡でないと見えない程にとても細いものです。

家具で主に使用する広葉樹は「環孔材」「散孔材」「放射孔材」の3パターンありますが、前二者が大半を占めています。
広葉樹は針葉樹よりも仕組みがやや複雑で、幹や枝を支える「木繊維」と水を通す専用の「導管」という組織に分かれています。
水分を吸い上げる箇所が限定されるため、広葉樹の導管は針葉樹よりもかなり太い物になります。

ナラ、ケヤキ、クリなどの環孔材の導管は特に大きく、目でもはっきりと確認できます。

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環孔材 2.jpg
春一番に導管を形成し、後に幹を支える組織を作るというサイクルを繰り返します。
年輪を見てみると文字通り、材には環状に孔があいています。
目に見える程の孔があるので触ると少しざらついた感触がしますが、木目がはっきりとするので凛々しい印象の材が多いのが特徴です。
導管の中に染料が入るとそれが際立つので、着色や漆で仕上げもよく施されます。
肌が荒い分、使用していく中で付いていく細かな傷は見えにくい。

散孔材は季節に関係なく導管を一様に分散させて形成しながら成長するタイプ。

ウォルナット 1.jpg

ウォルナット 2.jpg
環孔材と比べて散孔材の方が導管は細い傾向なので、触った感じも変化します。
クルミ科のウォルナットは散孔材の中では導管が大きめの材なので環孔材よりは少ないが幾らかざらついた感じがあります。

散孔材の中でもメープルや山桜などは導管がとても細いので目ではほとんど確認できません。
メープル 1.jpg

メープル 2.jpg
触れた感じも見た目もとても艶やかに仕上がります。
メープルと山桜は肌の緻密さでは同じ位なので、どちらもツルリとしていますが、材の硬さが違うので幾らか触れた感じが異なります。
硬いメープルはキリっと艶やか。
メープルより少し柔らかい山桜は優しくなめらか。

木材はバルサ材の様にとても軽く、指で強く押さえるとへこむ程柔らかい物もありますし、黒檀(エボニー)や紫檀(ローズウッド)の様に水に入れると沈む程に重く、叩くと金属のような音が鳴るほど硬い物もあるように、硬度の幅がかなりあるので適材適所で使うように考える必要性があります。
柔らかい木は暖かみのある優しい肌触りですが、強度面での脆さがあります。
硬くなるほどに衝撃や摩耗に対して強くなりますが、熱伝導率が高くなるので触感は冷たくなります。
例えば、リビングルームのフローリングにとても柔らかい材を選ぶと、使い始めは優しい足当たりで心地いいかもしれませんが、やがて摩耗してささくれ、トゲなどが刺さりやすくなったり、あまりに見た目が悪くなってしまったりします。
使用頻度が高く、耐久性が必要な箇所にはある程度の強度がある材を選ぶ方が賢明です。
長年使用すれば、どんな物でもメンテナンスは必要になってきますが、そのサイクルが余りに早く、大きな手間が必要となれば、それはなかなか面倒で、愛着が薄れる原因にもなると思います。
逆に寝室などに見た目が気に入っているからと非常に硬い木を選んだとします。
摩耗の少ないスペースで強靭な材料はオーバークオリティですし、雰囲気が好みだとしても、冬の朝、起きて一歩目があまりに冷たいのでは快適な部屋だとは言いづらい。
木は永く使用すればするほど味わい深い雰囲気を増していってくれます。
使用によってついていく傷もまたその味わいの一部分となっていきます。
家具でも住宅でも、それはあくまで道具ですので、ある程度ラフに使えるくらいが丁度良く、雰囲気と機能の調和した長期間使えるモノが良質だと言えると思います。


また新しい年が始まりました。
目の前の白い景色はきっとすぐに黄緑へ、緑から赤褐色へ。
そしてまたあっという間に白に戻っていくのだろうなと感じています。
時間を大切に。 そしてその中で出来る限り使いやすく良質なモノを生み出していけるように張り切っていきたいと思っています。 どうぞ今年も宜しくお願いいたします。

全ての人にとってこの一年がギラギラ素敵に輝きますように!!
おあげ.JPG
 pat woodworking 岡田通人 profile 

兵庫県西宮市で建築業に携わった後、pat woodworkingとして家具制作業にシフト。 大自然の広がる北海道黒松内町に工房を構え、たった一人で作業に取り組んでおられます。 
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