ベイカー社製 フルグレインブライドルについて


今回ご紹介致します革はベイカー社製(イギリス)のフルグレインブライドルレザーです。
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「フルグレイン」というちょっと聞き慣れない言葉がついていますが、まずは一般的なブライドルレザーについてご説明させていただきます。

ブライドルという名前は直訳すると手綱という意味で、乗馬の際に馬に指示を送るための道具(革製のベルト状のもの)を指します。現代ではブライドルレザーというと、乗馬用の馬具全般に使われている丈夫な革で、時間をかけて鞣した革に、さらにロウと油分をしっかり染み込ませ堅牢度を高めた革として認識されています。

製作の具体的な工程としては
【1】タンニン層(ピット層)に何ヶ月も原皮を漬け込みます。
その間タンニン濃度の薄い槽から段階を踏んで順番に濃い槽に移し替えていきます。
タンナー(=皮鞣し業者)によって漬け込む期間は異なりますが、時間をかければかけるほど皮の内部の繊維にしっかりタンニンの成分が染み込み、堅牢な革に仕上がると言われています。



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移し替えの作業 ※J&FJ Baker

【2】 出来上がった無染色のナチュラル状態の革に、染色とワックス(蜜ロウ、タロウ、植物性油等)を塗り込む作業を行います。
ここでのポイントはギン面(革の表面層)を擦るという作業です。
これによりワックスが革の内部に浸透しやすくなり、染み込んだワックスによって柔軟性を増した、より堅牢な革に仕上がります。
染色の工程はタンナーによって様々で、表面をスプレーで吹くところもあれば、ブラシによって手作業で行うところもあります。
またギン面を擦っていることで革の表面のトラやキズが隠れ、一般的なブライドルレザーと比較しますと、表面は綺麗に仕上がります。



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無染色のナチュラル状態の革 ※J&FJ Baker



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ブラシを使った手作業での染色 ※J&FJ Baker

こうしてブライドルレザーは出来上がりますが、革の表面にブルームと呼ばれる白い粉(蜜ロウ、タロウ、植物性油類)が噴き出しているもの、あまり噴き出していないものがあります。
これは各タンナーで仕上げの工程(作業手順、手間の掛け方)やワックスの成分が異なるからです。
一口にブライドルレザーといっても、タンナーによって実に様々なものが存在します。

さてベイカー社製フルグレインブライドルレザーに話は戻りますが、こちらの「フルグレイン」というタイプのブライドルレザーは、染色とワックスを塗り込む工程で行う「ギン面を擦る作業」を行わず、製作されるブライドルレザーになります。
ギン面を擦らないとワックスの染み込みが悪くなりますので、あまり一般的な方法ではないのですが、なぜベイカー社の場合はギン面を擦らないフルグレインタイプが作れるのかと言いますと、古来より代々受け継がれた独自のレシピがあるからだそうです。
歴史あるタンナーの企業秘密の部分に触れることですので詳細はベールに包まれておりますが、一つだけベイカーの社長アンドリューさんから教えていただいたことがあります。
それは羊の脂を使うということでした。
これを使うと革内部への浸透がとても良くなり、結果ギン面を擦らなくても上質なブライドルが製作出来るそうです。



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フルグレインもこのようにロウの成分と油分がしっかり染み込んでいます。

それではなぜフルグレインタイプを作り続けているのかという理由はただ一つ、「最も丈夫だから」ということです。
そもそもギン面は革で一番強度のある部分といわれております。
その強度の高い部分を擦ってしまえばその分だけ強度が落ちるということです。
アンドリュー社長は、やはりフルグレインタイプを一番におすすめされているのですが、現状は表面の綺麗なギン面を擦るタイプのオーダーの方が断然多いそうです。



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左が銀面を擦ったタイプで、右が銀面を擦らないフルグレインタイプです。
左はツルツルで綺麗ですが、右は革の本来の表情がむき出しで無骨な印象です。



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フルグレインブライドルバット(ロンドンカラー)


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フルグレインブライドルバット(ダークステインカラー)

この荒々しい迫力はまるで大昔のヴィンテージレザーのようです。
大きな面積で見ますとフルグレインは色の入り方にもムラがあり、他のブライドルレザーにはない独特の味わい深い表情がたまりません。
おそらくギン面を擦らない表皮は部位によって色が入り難いことが考えられ、ベイカー社のカタログにフルグレインタイプのブラックが無かったり、一番色の濃いブラウンがこちらのダークステインカラー(写真)であるのもそんな理由なのかなと思ってしまいます。



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こちら先日サンプルとして仕入れたフルグレインブライドルレザーで、試しに製作してみました。
現在実際に使いながら検証している最中ですが、粘り強いコシ感、握った時にギュッギュッと鳴る革のこすれる音(タンニン鞣しの良い革はこの音が鳴ります)、光沢の上がり具合、どれをとっても超一級品で正直驚いています。
詳細はまたの機会にエイジングレポートを交えてご紹介できればと思っております。
おたのしみに。


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