木々の声を聴く 2015年10月

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秋の北海道。
岡田さんの工房の周りも鮮やかな景色に彩られているようです。


 
外で吹く風が涼しいものから冷たいものへと変化し、朝晩は薪ストーブが活躍するようになってきました。
朝一番の工房の空気はすこしピリピリしていますが、ストーブに火を入れるとすぐに緩んでホンワカした感じになります。
ホンワカ空気は気分をホッとさせてくれて、いい気分で仕事に取り掛かります。 真冬になると、焚いても焚いても朝の冷え切った空気はなかなか溶けて柔らかくなってくれないので、少々大変になってきますが・・・。

この時期は太陽光の入る角度の具合が良いのか、この辺りは夕刻の空が赤くなる日が多くなります。
真っ赤になるのは雪が降り出すまでの期間限定。



夕焼け.jpg
燃える空。でも、空気は冷たいまま。
なんだか少しアンバランス。
暑い時期に空を真っ赤に染めれば雰囲気的にバッチリだと思うのですが、夏は随分おとなしい淡いピンクやオレンジ色。
冬になると、赤くする効果があまりにもなくて恥ずかしいのか雪雲の後ろに隠れてしまい、空は色彩どころか姿さえ見せなくなります。

工房近くの林も色付きだして冬支度。
落葉樹は風に吹かれる度に葉を舞い落とし、大地付近の葉の量が減るにつれて空の範囲が増えていきます。
山の変化は視覚的にも楽しいし、味覚的にも実り豊かないい季節なのに、秋はちょっとだけ感傷的な気分になってしまうのはなぜなのでしょうか。


アカゲラ.jpg
キツツキなのに樹も突かず遠くを見つめるアカゲラを見かけても「しっかり働かんかいな。」なんて思わない。
「秋やもん。色々考えてしまうよね。」と一緒に空を眺めてしまいます。



落葉樹は秋に葉を落とし、冬は耐え、春になると葉を広げ、夏に成長する。
ローテーションとしてはこれを繰り返すのですが、年輪を眺めてみると、その年その年の気候や環境の変化によって様々な年を乗り超えてきた事が分かります。


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一定期間順調に成長していたのに突然、10年間ほど年輪が極端に密になっていたりします。
寒い年が続いたのか、熊や鹿などの動物に樹皮を奪われてしまい、その部分を補修するために栄養を使ったので幹自体の成長が進まなかったのか。
梢を雷に打たれた、なんて可能性もあります。

逆にある一定の年代から突然成長が良くなっていたりする事もある。
天候の良い年が続いたのか、それとも親の世代が朽ちはじめ、陽をいっぱいに浴びる事が出来るようになってスクスクと伸び始めたのか。
色んな事を想像してしまいます。

年輪に記録された様々な一年一年は、製材されて板材なると表面の表情として現れる。
同じ物はこの世に二つとない。
そして少し削るだけでも表情は変化していきます。
テーブルの天板などで樹齢何百年の木を加工している時などは、ここに決めるか?それとももう数ミリ削った方がいいのか?どこで切り上げるか内部を想像しながら決めていきます。
出来るだけいい表情で仕上げたいので悩みながらも、いつも最後は「ここが一番ベッピンさん!」と自分に言い聞かせ何とか区切りをつけます。

椅子の製作では強度にも気を使います。
昔から建築用でも家具用でも木材の使用寿命は「適材適所できちんと使用すれば、森で成長した期間と同じだけ可能」と言われます。
使用条件や使用箇所によって不可能な場合や一部交換などのメンテナンスが必要な場合もありますが、基本的には樹齢100年の材で作った椅子は100年の使用に耐え、樹齢300年の材を主構造として建てた家は300年もつ、という事です。
現在は昔と比べて刃物や加工機械の精度も向上しているので、これよりも高い目標値を設定すべきであるとも言えます。
しかし、現在作られている家具や住宅の中でそれだけの期間使われる物が一体どれだけあるだろうかと考えると、それは本当に一握りの存在に限られると思います。
ほとんどの物は利益ばかりを求め手間を惜しんで作った為に、雑になって強度が足りなかったり、強度はあっても無骨すぎたり、飽きやすいデザインであったりで永く愛着心を抱いてもらえず使用寿命の3分の1程度の期間で廃棄または解体される。
そして、思慮不足の中でまた同じような物が作られる。
製作時の数日、数時間を削った為に使用期間をいたずらに短くしてしまうのでは、それは物を作っているのではなく、ただ無責任に環境を破壊しているに過ぎない。

一方で、半世紀以上前に作られた物やデザインを街の中で見かける事もあります。
美しさを感じさせるそれらのデザインは今でも古臭さを感じさせず、生活の一コマにピッタリと馴染みながら使用されています。
これらは古き良き時代に作られたから残っているという訳ではありません。
過去にも様々な不必要な物が作られ、そして消えています。
現在に至るまで残っている理由は、それが時代に流されない良質なモノだからです。
優れたデザインが永く愛され、今も残っているという事は本当に素晴らしいことですが、これらをこれからもその通りに作り続けるとなると少しつまらない感じがします。
これは物へのデザインと共にライフスタイルでも同じ事が言えると思います。
同じ繰り返しは安心感があるかもしれませんが、ちょっと面白みに欠けます。
それが優れていようとも。 より良いところを目指さず、ぬるま湯に浸かっているのでは人生は無意味で退屈です。
時間の流れと共に現在が過去を、そして未来が現在を優しく覆っていきながら、そこにある物も美しく変化させていきたいものです。
短期的なトレンドで物が溢れるのではなく、時の流れにきちんと沿ったモノと生活が広がれば、きっと今より素敵な世界になるはずです。

カタチを考える者として、そして作る者として、素材の使用寿命ギリギリまで使ってもらえるモノを作りたい。
出来ればその寿命をちょこっと超えてもなお「もう少し使える!」と愛着を持ってもらえるモノを作り上げていかなければならないと感じています。

北海道は彩りの季節が終わるとすぐに、厳しくも美しい白い季節がやってきます。
あっという間に今年も端っこが見えてきました。
残りの日々も楽しみながら、しっかり考えながら、邁進していきたいと思います。 
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 pat woodworking 岡田通人 profile 
兵庫県西宮市で建築業に携わった後、pat woodworkingとして家具制作業にシフト。 大自然の広がる北海道黒松内町に工房を構え、たった一人で作業に取り組んでおられます。 
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